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本の感想:とても身近な人間と犬とのお話

2018/01/13

保護活動のお手伝いでご一緒している齋藤さんに書評を書いていただきました。
本書籍の刊行もご支援いただきました。


偏見や差別はなくならない。なくなればいいという願いはつねに持っているけれども。
『保護犬はかわいそう。じゃない』このタイトルから想像する内容は、どんなものだろう。
里親と出会い、ようやく家庭犬としての幸福を見つけた保護犬が、最期は家族に見守られて安らかに犬生を終える愛と感動の物語?

違う、ちがーう。
8つのストーリーは、どこにでもある、とても身近な人間と犬とのお話。犬と関わりながら人はどんなことを感じるのか、犬は何を感じているのか(この部分は著者の想像であるが)を淡々と綴ったストーリーには押し付けが無い。そのぶん読み手の想像力に委ねられている。
思い切り感情移入してしまってボロボロ泣いたり、うんうんと相槌を打ったり、あ〜あ、やっちゃったね!と苦笑いしたり。
私は自分の犬たちを溺愛し、定期的に犬の保護活動の手伝いもしているので、愛犬家の立場でぐいぐい引き込まれながら読み終えた。
そして次に、自分をこの本の中の『保護犬』と置き換えてみる。
『転校生』『鍵っ子』『母子家庭』これらは私が子供の頃に、周囲の大人たちが私につけた付箋である。
これらの付箋から想像できるのは『保護犬』という響きのように、かわいそうな少女時代かもしれない。
ところが実際の私は「歌手の◯◯子ちゃんに似ている」と評判の、学校ではちょっとしたアイドルで
自分が他人から哀れみの目で見られているなどとは想像したこともなかった。
同世代の友人たちは「絵が上手でいいなぁ」「自分の意見をはっきり言えて羨ましい」と、私個人を認めてくれていた。
人にも犬にもそれぞれの生い立ちがあり、歩んできた過去がある。『保護犬』はひとくくりのかわいそうな生き物ではない。
私たち一人ひとりがそうであるように、個性やくせがあり、それを認める相棒と出会うと、キラリと輝く。
どうか子供のような気持ちで8つのストーリーを読んでいただきたい。
昨日より少し視野が広がる、そんな一冊になると思う。
齋藤 美樹

 

(こう見えてもこの子たちパピーです。なんじゃこれー!(写真左)とでも言っているような様子が可愛い。本が小さく見えます(写真右)。グレートデンという犬種です。 コメント:さとう)

 

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